転がり軸受用鋼球

軸受鋼(JIS G 4805 ・ 種類記号SUJ2)を使用し主としてボールベアリングに用いられます。
又耐摩耗、耐荷重に優れていることから、あらゆる産業機械の回転部分の使用に適しております。

1.適用範囲

この規格は、主として転がり軸受用鋼球について規定する。
また、転がり軸受用ステンレス鋼球については、転がり軸受用鋼球に準じ規定する。(BAS1007)

対応規格

JIS B 1501:2009 転がり軸受-鋼球
ISO 3290-1 Rolling bearings-Balls-Part1:steel balls

2.用語及び用語の意味

この規定で用いる主な用語、及び用語の意味は、次による。

2.1

呼び

鋼球の直径が同一であることを示すのに一般的に用いる呼称。ミリメートル系列の呼びは、
呼び直径に「mm」を付け、インチ系列の呼びは、「相当インチ寸法」で表す。

2.2

呼び直径(nominal ball diameter)Dw

呼びをmm単位で表した値。

備考

呼び直径は、それぞれの呼びの鋼球の直径の基準寸法(基準直径)である。

2.3

実測直径(single ball diameter)Dws

1個の鋼球の実際の表面に接する平行二平面間の距離。

2.4

平均直径(mean ball diameter)Dwm

1個の鋼球の実測直径の最大値と最小値の算術平均値。

2.5

直径不同(variation of ball diameter)VDws

1個の鋼球の実測直径の最大値と最小値の差。

2.6

表面の不均一性と形状特性(surface irregularites and form parameters)

鋼球の表面上に繰り返し分布する完全な真球面からの狂いの大きさ。
形状特性を示すものには次のものがある。

2.6.1

真球度(deviation from spherical form)鋼球表面の最小二乗平均球面の中心をその中心とする最小外接球面と最大内接球面との半径差。

2.6.2

ウェビネス(waviness)理想球形からの不規則又は周期的な表面のうねり。

2.6.3

表面粗さ(surface roughness)製造方法及び他の影響より生じた比較的小さな間隔を持つ表面の不均一性。表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で表す。

2.7

ロット(ball lot)

等しいと考えられる条件の下で製造し、同一品として取り扱う一定数量の鋼球。

2.8

ロットの平均直径(mean diameter of ball lot)DwmL

ロット内の最大鋼球の平均直径と最小鋼球の平均直径との算術平均値。

2.9

ロットの直径の相互差(variation of ball lot diameter)VDwL

ロット内の最大鋼球の平均直径と最小鋼球の平均直径との差。

2.10

等級(ball grade)G

寸法、形状、表面粗さ及びゲージ間隔の許容値についての特定の区分[付表2参照]。

2.11

ゲージ(ball gauge)S

ロットの平均直径と呼び直径との寸法差であって、あらかじめ等級ごとに規定した系列の値の一つ。

備考

各ゲージは、該当する等級に対してあらかじめ規定したゲージ間隔の整数倍である[付表2参照]。

2.12

ゲージからの寸法差(deviation of a ball lot from ball gauge)ΔS

ロットの平均直径から呼び直径とゲージの和を引いた値。ΔSDwmL-(DwS)

2.13

サブゲージ(ball subgauge)

あらかじめ規定した系列の値であり、ロットの平均直径とゲージとの差に最も近い値。

備考

各サブゲージは、該当する等級に対してあらかじめ規定したサブゲージ間隔の整数倍である。

2.14

硬さ(hardness)

特定の方法によって押し込む圧子に対する抵抗の度合い。

3.等級及び品質

3.1

寸法(呼び及び呼び直径)

鋼球の呼び及び呼び直径は、付表1による。

3.2

形状及び表面の品質

鋼球の直径不同、真球度及び表面粗さは、付表2による。
ウェビネスの許容限界値及び測定方法は、受渡当事者間の協議による。
表面の外観特性、きずその他同類のものは、受渡当事者間の協議による。

3.3

等級及びゲージ

鋼球の等級は、G3、5、10、16、20、24、28、40、60、100及び200とする。
それぞれの等級を適用する呼びの範囲は、付表2による。
ロットの直径の相互差、ゲージ間隔、推奨ゲージ、サブゲージ間隔及びサブゲージは、
付表2による。

3.4

硬さ

鋼球の硬さは、付表3による。

4.材料

鋼球の材料は、JIS B 4805(高炭素クロム軸受鋼材)による。化学成分を付表4に示す。

5.測定方法

5.1

平均直径及び直径不同

平均直径及び直径不同を求めるために必要な直径は、鋼球1個を測定平面とこれに垂直測定子との間に置き、通常10回以上方向を変えて測定する。
平均直径は、その最大値と最小値の算術平均値として求め、直径不同は、その最大値と最小値との差として求める。
この場合の測定力は、3N以下とする。

備考

平均直径は、通常測定力及び鋼球の質量による弾性接近量を補正する。

5.2

真球度

<半径法測定>
真球度の測定は、互いに90°の3赤道平面に於ける真円度測定によって行う。
一つの実測赤道平面における真円度評価は、最小二乗中心によって行う。
各実測赤道平面に於ける半径差の最大値を真球度とする。
また、真円度評価に最小外接円を使用し、最小外接円から鋼球表面までの半径方向の距離の最大値を真球度としてもよい。疑義が生じた場合は、最小二乗中心法とする。

<直径法測定>
真球度の簡易評価方法として、鋼球1個を角度90℃のV溝とこれに垂直な測定子との間に置き、方向を変えて測定したときの測定子の動きの最大の値を2で除した値を真球度とする。
この場合の測定力は、3N以下とする。

5.3

ウェビネス

ウェビネスは、速度振幅として評価することを推奨する。
通常鋼球表面のウェビネス成分は、フィルタを用いたウェビネスメータで測定する。

5.4

表面粗さ(Ra)

鋼球の表面粗さの測定は、JIS B 0651に規定する測定機を用い、評価方式及び手順は、JIS B 0633による。

5.5

ロットの直径の相互差及びゲージ

ロットの直径の相互差は、ロット内の最大鋼球の平均直径と最小鋼球の平均直径との差として求める。
ゲージは、ロットの平均直径の寸法差が、付表2に規定するゲージのうち最も近い値として求める。

5.6

硬さ

呼び3mm以下の鋼球の硬さの測定は、JIS Z 2244による。
また、呼び3mmを超える鋼球の硬さの測定は、JIS Z 2245による。
鋼球の硬さを球面で直接測定する場合、圧子の先端、鋼球の中心及び円すい座の中心が、試験機の圧子取付軸に一致することが必要である。
軸心の不一致は、硬さの読みを低下させ、特に小さい鋼球の場合には、その影響が大きい。
鋼球の硬さを球面で直接測定した場合には、見掛けの硬さを参考 硬さの補正によって補正する。

6.検査

鋼球の検査は、5.の測定方法について行い、3.の等級及び品質の規定を満足しなければならない。

7.呼び方

鋼球の呼び方は、名称、呼び、ゲージ及び等級による。

例1転がり軸受用鋼球3mm+3μmG10
例2転がり軸受用鋼球3/8-4μmG40

8.包装及び表示

8.1

包装

鋼球は、油脂その他によってさび止めした後、適切な容器に収める。

8.2

表示

容器の表面に少なくとも次の事項を表示する。表示内容は、受渡当事者間の協議による。
(1) 名称 (2) 呼び (3) ゲージ (4) 等級 (5) 数量
(6) 製造業者名又はその略号 (7) 製造年月日

9.引用規格

JIS B 0104

転がり軸受用語

対応国際規格

ISO 5593 Rolling bearings―Vocabulary(MOD)

JIS B 0124

転がり軸受―量記号

対応国際規格

ISO 15241 Rolling bearings―Symbols for quantities(MOD)

JIS B 0633

製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―表面性状評価の方式及び手順

対応国際規格

ISO 4288 Geometrical Product Specifications(GPS)―Surface texture:Profile method―Rules and procedures for the assessment of surface texture(IDT)

JIS B 0651

製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―触針式表面粗さ測定機の特性

JIS B 1515

転がり軸受―公差―第1部:用語及び定義

対応国際規格

ISO 1132―1 Rolling bearings―Tolerances―Part 1:Terms and definitions(IDT)

JIS B 7451

真円度測定機

対応国際規格

ISO 4291 Method for the assessment of departure from roundness― Measurement of variations in radius(MOD)

JIS G 4805

高炭素クロム軸受鋼鋼材

JIS Z 2244

ビッカース硬さ試験―試験方法

JIS Z 2245

ロックウェル硬さ試験―試験方法

参考 硬さの補正

(1) ビッカース硬さ

呼び0.3~3mm及び0.025~7/64の鋼球の硬さは球面で直接測定した場合には、見かけの硬さに参考表の補正係数を乗じて補正する。

参考表:

d/Dw補正係数
0.0040.995
0.0090.990
0.0130.985
0.0180.980
0.0230.975
0.0280.970
0.0330.965
0.0380.960
0.0430.955
d/Dw補正係数
0.0490.950
0.0550.945
0.0610.940
0.0670.935
0.0730.930
0.0790.925
0.0860.920
0.0930.915
0.1000.910

ここに、

d

くぼみの対角線の長さの平均(mm)

Dw

呼び直径(mm)

(2) ロックウェル硬さ

呼び3.5~65mm及び1/8~41/2の鋼球の硬さは球面で直接測定した場合には、次の補正式で補正する。

補正式:

Ho=H+△HH=59×(1-H160Dw

ここに、

Ho

硬さ(HRC)

H

球面を直接測定した硬さ(HRC)

△H

硬さ補正量(HRC)

Dw

呼び直径(mm)

なお、この式はHoがHRC55以上の場合に適用する。

(3) 圧砕荷重(参考)

呼び3.5~65mm及び1/8~41/2の鋼球の圧砕荷重の最小値が必要な場合には、次の実験式から求めることができる。
P=85.9Dw1.773×9.81(N)   {P=85.9Dw1.773(kgf)}
ここに、 P:圧砕荷重(最少)  Dw:呼び直径(mm)
なお、試験は、角度120°の円すい座に同一の呼びの鋼球2個を重ねて行う。この場合、円すい座の硬さは、HRC60以上とする。
負荷速度は、原則として2~6kN/s{204~612kgf/s}とする。負荷速度の標準を示したのは、負荷速度が非常に大きいときには圧砕荷重が大きくでるからである。
しかし、大きい鋼球においては、この標準より幾分速い負荷速度をとることもある。

付表1 呼び及び呼び直径

呼 び呼び直径
Dw
(mm)
ミ リインチ
0.3mm0.3
0.4mm0.4
0.5mm0.5
0.6mm0.6
0.0250.635
0.7mm 0.7
 1/320.79375
0.8mm 0.8
1mm 1
 3/641.19062
1.2mm 1.2
1.5mm 1.5
 1/161.5875
 5/641.98438
2mm 2
 3/322.38125
2.5mm 2.5
 7/642.77812
3mm 3
 1/83.175
3.5mm 3.5
 9/643.57188
 5/323.96875
4mm 4
4.5mm 4.5
 3/164.7625
5mm 5
5.5mm 5.5
 7/325.55625
 15/645.95312
6mm 6
 1/46.35
6.5mm 6.5
 17/646.74688
7mm7
 9/327.14375
7.5mm7.5
5/167.9375
8mm 8
8.5mm 8.5
 11/328.73125
9mm 9
 3/89.525
10mm 10
 13/3210.31875
11mm 11
 7/1611.1125
11.5mm 11.5
 15/3211.90625
12mm 12
 1/212.7
13mm 13
 17/3213.49375
14mm 14
 9/1614.2875
15mm 15
 19/3215.08125
 5/815.875
16mm 16
 21/3216.66875
17mm 17
 11/1617.4625
18mm 18
 23/3218.25625
19mm 19
 3/419.05
呼 び呼び直径
Dw
(mm)
ミ リインチ
 25/3219.84375
20mm20
 13/1620.6375
21mm21
27/3221.43125
22mm 22
 7/822.225
23mm 23
 29/3223.01875
 15/1623.8125
24mm 24
 31/3224.60625
25mm 25
 125.4
26mm 26
 1 1/1626.9875
28mm 28
 1 1/828.575
30mm 30
 1 3/1630.1625
 1 1/431.75
32mm 32
 1 5/1633.3375
34mm 34
 1 3/834.925
35mm 35
36mm 36
 1 7/1636.5125
38mm 38
 1 1/238.1
 1 9/1639.6875
40mm 40
 1 5/841.275
1 11/1642.8625
1 3/444.45
45mm45
1 13/1646.0375
1 7/847.625
1 15/1649.2125
50mm50
250.8
2 1/853.975
55mm55
2 1/457.15
60mm60
 2 3/860.325
 2 1/263.5
65mm 65
 2 5/866.675
 2 3/469.85
 2 7/873.025
 376.2
 3 1/482.55
 3 1/288.9
 3 3/495.25
 4101.6
4 1/4107.95
4 1/2114.3
   
   
   
   
   
   
   
   

付表2 等級の適用範囲、形状及び表面粗さ並びに区分けの精度及びゲージGrade & Tolerance

単位(Unit) μm

等級
Grade
呼びの適用範囲
Applicable Range of Ball Size
形状の精度及び表面粗さ
Accuracy of Form and
Surface Roughness
区分けの形状及びゲージ
Sorting Accuracy and Ball Gauge
1欄
Column 1
2欄
Column 2
直径不同
Ball
Diameter
Variation
VDWS
(最大)
(max.)
真球度
Sphericity
 
(最大)
(max.)
表面粗さRa
Surface
Roughness
R a
 
(最大)
(max.)
ロットの
直径の
相互差
Lot
Diameter
Variation
VDWL
(最大)
(max.)
ゲージ
間隔
Ball Gauge
Interval
ゲージ
Ball Gauge
 
S
30.3mm~12mm0.025~1/20.080.080.0100.130.5-5,…,-0.5, 0,+0.5,…,+5
50.3mm~12mm0.025~1/20.130.130.0140.251-5,…,-1, 0,+1,…,+5
100.3mm~25mm0.025~10.250.250.0200.51-9,…,-1, 0,+1,…,+9
160.3mm~25mm0.025~10.40.40.0250.82-10,…,-2, 0,+2,…,+10
200.3mm~38mm0.025~11/20.50.50.03212-10,…,-2, 0,+2,…,+10
240.3mm~38mm0.025~11/20.60.60.0401.22-12,…,-2, 0,+2,…,+12
280.3mm~38mm0.025~11/20.70.70.0501.42-12,…,-2, 0,+2,…,+12
400.3mm~50mm0.025~2110.06024-16,…,-4, 0,+4,…,+16
600.3mm~65mm0.025~31.51.50.08035-25,…,-5, 0,+5,…,+25
1000.3mm~65mm0.025~41/22.52.50.100510-40,…,-10, 0,+10,…,+40
2000.3mm~65mm0.025~41/2550.1501015-60,…,-15, 0,+15,…,+60

サブゲージ間隔については、JIS B 1501参照。

付表3 硬さ

呼  び
Size
硬  さ
Hardness
1欄2欄HVHRC
0.3mm~3mm0.025~7/64772~900(63~67)
3.5mm~30mm1/8~1 1/862~67
32mm~65mm13/16~41/261~67

備考: ( )内の値は、換算値を参考に示してある。

付表4

種類記号
Symbols of kind
化 学 成 分 (%)
Chemical Analysis
CSiMnPSCrMo
SUJ 10.95~1.100.15~0.350.50 以下0.025 以下0.025 以下0.90~1.20
SUJ 20.95~1.100.15~0.350.50 以下0.025 以下0.025 以下1.30~1.60
SUJ 30.95~1.100.40~0.700.90~1.150.025 以下0.025 以下0.90~1.20
SUJ 40.95~1.100.15~0.350.50 以下0.025 以下0.025 以下1.30~1.600.10~0.25
SUJ 50.95~1.100.40~0.700.90~1.150.025 以下0.025 以下0.90~1.200.10~0.25

備考:

  1. 不純物としてのNi及びCuは、それぞれ0.25%を超えてはならない。
    ただし、線材のCuは、0.20%以下とする。SUJ 1、SUJ 2及びSUJ 3のMoは、0.08%を超えてはならない。
  2. 受渡当事者間の協定によって、付表4以外の元素を0.25%以下添加してもよい。
  3. 製品分析を行う場合は、分析試験を行い、その許容変動値は、JIS G 0321(製品分析の許容変動値)による。

備考

詳細につきましては、下記のリンクより確認いただけます。